設立の経緯
1949 年に「通訳案内士法(旧通訳案内業法)」が施行され、国家資格としての通訳案内士制度が始動した。幾多の志有る人々が難関の資格試験に挑み、合格を勝ち得て正規の通訳案内士の道を歩み、訪日旅客が日本への印象・評価を高め、親しみを覚える事に寄与してきた。
2003 年には、政府による観光立国宣言のもと,観光は重要な国家政策課題となり、通訳案内士は訪日旅客対応のプロとして、日本の観光立国及び国際親善に貢献すべく邁進してきた。この結果、2018 年には 3,000 万人を超える訪日旅客を迎えるまでとなったが、これに至る過程で通訳案内士が果たした役割は大きい。
一方、急増した訪日旅客に対処する事を目的に 2018 年に施行された改正通訳案内士法は、通訳案内士による業務独占の廃止等、制度を大幅に見直すものとなり、名称も「全国通訳案内士」に変更、地方公共団体により認定される地域ガイドが「地域通訳案内士」として追加される事となった。また、全国通訳案内士試験科目の見直し並びに定期研修受講の義務付け等、通訳案内士の質の維持・向上を目的とした新たな措置も講じられた。
しかしながらその結果、以下の様な新たな課題・問題が浮き彫りとなった。
- 通訳案内士制度の課題 ~ 多様化した通訳案内士の現状と施策との乖離
- 全国通訳案内士試験の課題 ~ ①試験問題の一部に不適切性 ②受験者の減少・新型コロナの影響に因る試験会場削減
- 通訳案内士の地位・認知度の低さ ~ 旅行ガイドの最上位に位置付けられた「国家資格としての通訳案内士」の地位確保や認知度向上に関し設定された以下の点の未実現・未達成
①多様な主体が通訳案内を有償で実施することが可能となった状況下での「法律により位置付けられた国家資格である通訳案内士」の意義の周知
②認知度を向上する具体的な取り組み・措置
③就業機会を確保する環境を整備するための具体的且つ効果的な取り組み
④通訳案内士に対する優遇的な対応がなされるよう関係機関への働きかけ等の取り組み
- 新型コロナ感染症や震災等、大規模災害・不測の事態発生時に於ける通訳案内士支援
通訳案内士は、個々がプロのガイドであり、就業・情報収集・研修・交流等の為に、通訳案内士団体に所属している者も多い。通訳案内士団体の規模は様々であり、問題・課題発生時に各団体が個別に関係各所に働きかけたり、必要に応じて団体間ネットワークを組んで対応して来た。しかしながら、その影響力・成果には限界が有った事に鑑み、全国の声を集約し、政治的・法的・経済的な要望を取り纏め、関係各所に訴えを届ける連合体を組織・設立して欲しいとの要望が全国から寄せられる事となった。
また、この通訳案内士団体窓口の一本化や連合体の組織化は、観光庁を始めとする関係各方面からも期待されるところであった。
そこで、有志の通訳案内士団体で Working Group を組成し昨年秋から、そして参加団体を増やして今年の春から連合体の設立に向けた検討を行なって来た。
その結果、通訳案内士の立場から様々な施策や課題について、或いは通訳案内士が担うべき役割について、広範に把握し関係各方面と共有・検討した上で、的確な施策に繋げて行く事が肝要との結論に至った。その為には、より多くの通訳案内士団体が一体となって現局面に対処する事が必要であり、これまでの緩やかなネットワーク型連絡協議会の形ではなく新たな連合体組織を設立する事とした。